イラストSS

　風を切る音が響く。ヒュウ――頬を擦るのは寒空に漂った凍て付く気配。
　シャイネンナハトの真っ最中。雪空の中をトナカイと共に疾く進むのは使命を帯びたミニスカサンタクロース。
　一方はプレゼントが飛ばされないようにと抑えながらそりへとしがみ付く。揺らぐそりの振動は真白の袋を跳ね上がらせてリアの心臓をぎゅうと雑巾絞りした。
「ちょっと！　落ちるだろうが！」
「えっ！？　何て！？」
「ちょ――ッ」
　風の音、振動の音、エトセトラ。何も聞こえませんと言いたげに振り向いた秋奈はトナカイの手綱を勢いよく引っ張った。
　ぎゅん、と首が上向いたトナカイが一時停止の姿勢をとって「お前ッ！？」――リアが叫ぶ。
「たははは。行くぜ、トナカイ！　全速前進DA！　ワハハハー！」
　楽しげに空を駆ける秋奈にトナカイは待っていましたと言わんばかりの急発進。
「ハッハァー！　トナカイ！　その調子！」
　地を蹴って、勢い良く跳ね上がる。スピードは上々、この調子ならばプレゼントだって配りきれる。
　秋奈とトナカイの興奮は冷めやらぬ。
「早い！　早いって！！」
　慌てるリアの叫声だけがしじま満ちたシャイネンナハトに木霊した。

　　＊SS担当：日下部あやめ