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待ち人現れず
待ち人現れず
イラストSS
●あなたを『こう』ということ
「他の人との予定が終わった後、会えないっすか?」
いとしいひとと、『同盟』のうちの一人を交えた些細な会合を済ませた後、ウルズは『彼』に向けて誘いの言葉を掛けた。
向こうは難しいと言ってはいたし、ウルズ自身もその返答に「わかったっす」と笑顔で頷いたが。
(……それでも、こうして待っちゃうのは、未練なんすかね)
経った時間は既に数刻。一人、冷え切った身体で待ち続けるウルズは思う。
――貴方を乞うということ。私を覚えていて欲しいということ。
時に、自らの在り様を嘘だと考える彼女が、待ち人に対して向ける気持ちの内実がそれだ。
それだけであるはずだった。以前までは。
「けれど、あなたにだけは」と。
幾度も想いを伝え、それを躱されて。そんな日々を繰り返すうちに終ぞ固まった想いは、きっと、『嘘』である彼女の数少ない『本当』のもの。
――貴方を恋うということ。私だけを見て欲しいということ。
夜は過ぎる。軈て朝を迎える時も遠くはあるまい。
それほどの長い長い時間を、けれど、たった一人で待ち続けることが出来る、その理由は――――――
※SS担当者:田辺正彦