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閠のせたあおこによる2人ピンナップクリスマス2021
閠のせたあおこによる2人ピンナップクリスマス2021
イラストSS
秋、リボンや布で桃色に染まった坂。
雪空、大きな樹の下で、何かを願う人々。
夜、湖に浮かんだ蓮の葉を跳んで渡る白い鳥。
「わ、あ……」
其れ等をしっかりと“両目で”見て、閠は感嘆の声を上げた。
グレモリーは何処かに出かけようとイレギュラーズを誘う度に、其処の景色を絵にして残してきた。そして閠はそんな彼に、いつか絵を見せて欲しいと願っていた。
其れが今、こうして叶っている。
「……君の予想通りかな」
グレモリーが問う。閠の事を気遣ってか、彼の後ろ――其の両眼を見ない位置に立っている。
「凄く、綺麗です。こんなに綺麗な、絵に、なるんですね」
「そうだね。君にはラフしか見せた事がなかったかな。アトリエに持って帰ってから色を乗せるんだ」
グレモリーの声は何処か柔らかい。画家として、きっと褒められるのは嬉しいのだろう。多分。閠はそう解釈した。
彼が誘う場所はいつだって不思議で。閠は出向いては驚いたり、挑戦したり、失敗したり、成功したり、色々な経験をしてきた。
御守があると聞けば探してみたり、出来る事はなんだってやった。
でも本当に欲しかったのは、こうして話す一時だったのかもしれない。
「ねえ、閠。そのまま立っていてくれるかな」
「え?」
「後ろ姿で良い。君を描きたくなった」
※SS担当者:奇古譚