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白薊 小夜のやむむによるおまけイラスト
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●「それって愛の告白なのかしら?」
ちらちらと舞う幻想のそれに比べてこの辺りに降る雪は少し重い。
牡丹の花びらのように大きな雪片は違う貌を見せていたが、聖夜の風情を彩る風流としては同じである。
「やはり、降るのは変わらぬな」
「これって『そういう』ものなのでしょう?」
天に向けてその手を翳した死牡丹・梅泉(p3n000087)に淡く微笑んだ白薊 小夜(p3p006668)が冗句めかしてそう応じた。
「今日は聖夜らしいわね。
私達に馴染みの深いのはクリスマスの方だけど――」
「――そう言えば主は切支丹だったな」
「信心深いかと言われると自分でも自身は無いけど、ね」
女怪だなんだと言われても乙女心は十分だ。
クリスマスの意味合いは些か剣呑なる『想い人』と穏やかに逢瀬するには格好の材料になる。先を行く梅泉から丁度三歩。普段より艶やかな和装に身を包む小夜は楚々としながらも華やいで見えた。
(……本当に)
『そんな風』である自分に小夜は少し驚きさえ覚える。
男の背に何かを期待する事はもう無いと思っていたのに――
つれない男の背中は無防備でありながら、小夜に『三歩』以上の距離を思わせた。妖刀たる自身の切れ味さえ届かない高みは彼女の美貌をときめかせて止まらない。
「……小夜」
「なあに」
「そう言えば――去年もこんな風であったな」
路傍の椿に目を細め、梅泉は不意にそう言った。
小夜は『純情な浮気者』で、梅泉は『好みの煩い男』だった。双方気に入り、殺し合う――数奇なる関係も長く続いている。
雪椿
願わくばまた
この逢瀬
季(とき)忘れ居る
白薊の君なら
「……なあに、それ」
小夜の薄い唇が綻ぶ。
「――それって愛の告白なのかしら?」
毒花の如く。意地悪く。冗談めいて。
笑う小夜に前を行く梅泉は振り返らない。
「存外、そうやも知れぬなぁ」
「――――」
切り返しは邪剣の切っ先より尚鋭く予想外。
一瞬で真っ赤になった小夜はその真意を確かめる事も出来ない。
唯、『彼が振り向くような男』ではない事だけに感謝した――