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久住・舞花のやむむによるおまけイラスト
久住・舞花のやむむによるおまけイラスト
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●雪見酒
「随分とお疲れの御様子で」
「『アレ』でも腕自体は中々でな。
野生動物のように勘がキレれば手強いのよ」
僅かに冗句めいた舞花に梅泉は嘆息した。
シャイネン・ナハトは争いの無い日である。舞花も梅泉の『ほぼ同郷』なれば、概ねそれが『クリスマス』のようなものである事は知っていたが、当然ながら両者共敬虔な信教者ではない。
「たてはさんはまた撒かれましたか」
「主と吞んでいる事が答えだと思うがなあ」
「それはそうでしょうね」
目を閉じた舞花は小さく微笑んだ。
(しかし……らしいと言えばらしい、か)
普段から剣呑とした梅泉がこんな日には大人しいのは『粋』の問題と知れていた。協調性に関わらず文化の尊重をする辺りは『育ちの良さ』を感じて何処かおかしい。
「何を笑っておる」
「『いいえ、何でも』」
「然様か」と杯を傾ける梅泉は窓の外の雪を眺めながら上等の酒を愉しんでいる。舞花はと言えばそんな彼の杯が開く前には次を注ぐ、実に如才のない『いい女』ぶりを見せていた。
「……うむ、いい夜じゃ」
酒場の中は多少騒がしいが、外は圧倒的に静謐だった。美味い酒に見事な景色、傍らには美女と来ればまぁ、言うまでも無く彼の機嫌が悪くない事は知れている。
「たてはさんがいないから、ですか」
「主も言うようになったなあ――」
くすくすと笑った舞花の頬も僅かに赤い。
酒が入れば饒舌にもなるというものだ。
尤も彼女は言葉よりずっと彼が彼女に甘い事を知っていたけれど――