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光る街を歩めば
光る街を歩めば
イラストSS
二人分を包むマフラーを自信満々に準備した花丸へひよのは「手を繋がないと転びそうですね」と揶揄い笑った。
イルミネーションの会場までもう少し。手を握り、穏やかな歩調で歩く。
クリスマスまでには大変なことが山ほどあった。苦労もした上に、ひよのには心配を掛けた自信がある。
「ひよのさん、あの」
「心配させるんですから。それでも、一緒にこうしてイルミネーションを見に行けて良かったです」
「うう……ごめんね?」
「良いですよ。無事だったんですから」
一緒に出掛けようと山のように約束をしたけれど、それを果たすことも難しくて。繋いだ手を離せぬままに花丸は「今度は、黙っていなくならないよ」と呟いた。
「本当ですよ。待つ方は辛いですし」
「そうだよね……それは本当に」
「でも、花丸さんの帰る場所であるなら、嬉しいですよ」
花丸の手をぎゅっと確かめるように握ってからひよのは微笑んだ。
吐出す白い息が冬の風に攫われる。髪をなびかせて、頬を冷たく包み込む。
「ほら、行きましょう」
揃いのデザインのコートを揺らして歩くひよのの歩調に合わせ、ゆっくりと。
こんな穏やかなときが戻ってきた事を喜びながら―――
*SS担当:夏あかね