イラストSS

●優しい時間

　愛しい人との三度目の聖夜。
　アーリアとミディ―セラは、アーリアの部屋で酒やつまみを嗜みながら、2人の時間をゆったり過ごしていた。
「あぁ、それ私のグラスよぉ！」
　アーリアはふにゃりと笑っているが、彼女がまだ本調子ではないことをミディ―セラは知っている。
　彼女からグラスを取った彼は、珍しく飲みすぎて赤くなった顔を耳元に近づけて優しく微笑み、包み込む。
「まだ本調子ではないのですから……そう、だからこれはわたしが飲んでしまうのです」
「んー、やだぁ」
　駄々を捏ねつつも、彼女を思う声にアーリアは寂し気に零す。
「……ごめんね、まだ本調子じゃなくて」
「大丈夫。元気になるまで、わたしに全部任せてくださいね」

　片方の手に指を絡ませ、ぎゅっと手を握る。

　一瞬の間を置き、少し気恥しくなったアーリアはフフッと笑った。
「ね、みでぃーくん。幸せねぇ」
「ええ、ええ。またあなたの隣にいられて、とっても幸せです」
　カランとグラスの氷が溶けて音を立てる。
　酒のあては、大人なビターチョコレート。

恋人たちの決して当たり前ではない、いつもの時間。
その幸せを、チョコレートと一緒に噛みしめていた。


　※SS担当者：水野弥生