イラストSS

　何処ぞの貴族の邸宅、あるいは上流階級御用達のホテルの一室か。調度品ひとつひとつが明白に高級で、それらが嫌味でない限度すれすれに並ぶ様も祝祭のためと言い張れば目を瞑れよう。暗い色合いの壁に、シャンデリアの暖色が反射する白い革のソファーの手触りは艶やかに。空気すらもしっとりと華やかさを孕んでいた。
　深く沈み込む一人掛けの椅子の上、この場においてはあまりにも無邪気な久夛良木・ウタの笑顔を包むのは、なめらかなシルクの光沢放つ黒のドレスだ。透ける胸元に、肩から背中まで晒した大胆なデザインは肌を白く輝かせる。髪飾りと揃いの黒薔薇をあしらったウエストは女性らしいラインを魅せていた。
　そして、レースの指先で摘まれた彼女のグラスにアルコールを注ぐヴェルグリーズはワインの赤で首元を彩る。濃紺に馳せる白ストライプの三揃え、オフホワイトのショールとシックな着こなしは中身の色香を存分に引き立てた。ウタとは対照的に穏やかな瞳は星空に似て、映り込むシャンパンの泡が幾度も幾度も弾けていく。

　——さあ、全ては満ちた。
　溢れんばかりの煌めきを存分に味わおう。
　苺たっぷりのケーキもクリームは甘さ控えめに。
　紳士淑女に着飾って優雅にフルートを打ち鳴らせば大人の時間の始まりだ！


　※SS担当者：氷雀