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イラスト詳細

シキ・ナイトアッシュの千乃 安倭によるおまけイラスト

作者 千乃 安倭
人物 シキ・ナイトアッシュ
ミヅハ・ソレイユ
イラスト種別 おまけイラスト(→元発注イラスト
納品日 2021年12月24日

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イラストSS

 夜半に降り積もった雪の下、静寂の音に満ちた森に目覚めの季節はまだ遠い。小鳥の代わりに風が鳴き、枯れた枝から舞う白にキラキラと反射する生まれたての光は、陽と呼ぶには温もりを忘れていた。
 そんな眠れる森を進む影ふたつは笑い声を連れ立って、ぎゅ、ぎゅ、と真っ新な獣道に足跡を刻んでいく。幅は違えど手を繋ぎ合うようにぴたりと寄り添ったそれは帰路で、子供のように綻ぶ頬がうっすらと色づくのは寒さのせいだけではなく雪遊びに興じた名残だ。弾む吐息の霧も満足げに、お供に加えた雪兎を包んだ両掌を見つめる藍柱石。雪解けを信じるアネモネに似た淡い紫を透かす冬日よりも確かな橙。色の少ない景色に映えるふたりだった。
 一歩、また一歩と夜の気配が消える中で、少年——ミヅハ・ソレイユの黒の双眸は柔らかくも芯を解かさない。狩人は森を知る。雪の深さや固さ、埋もれた木の根に足を取られぬよう、傍らの彼女——シキ・ナイトアッシュが踏み出す先を見守る兄のような眼差しだ。そうは言ってもシキも覚束ない少女ではないし、ミヅハの方が年下なのだけれど。
 葉を落とした樹々は空を遮らず、寒空の雲は蓋をする程に重くはなく——しかし幻想的に閉じた世界。ふたりといっぴきだけの散歩は続く。


 ※SS担当者:氷雀

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