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ギルベルト=フランツのヤぴによるおまけイラスト

イラストSS

「我が君の素晴らしさと言ったらもうどんな英雄譚よりも歴史書よりも心躍る物語になってしまうのですよ! 素晴らしい! 我が君素晴らしい!!」
 良き年を経たゴシック調の家具に囲まれて寛ぐ男達の中、台詞を回す舞台上の俳優さながらに朗々と主人への愛を語るは銀狐。良家の執事を装いながらの長口上はギルベルト=フランツにとって時折喉を潤すウイスキーよりも余程酔えるらしい。
 相槌を打つバルガル・ミフィストはネクタイにベストも揃えた黒いスーツ姿。一見その場の誰よりもお堅そうな印象は黒縁眼鏡のレンズ越しに染まった頬と人の良さそうな笑みが和らげ、酔いと空気を楽しむ様が見て取れた。
 彼が寄り添うように立ち、時折親しげに言葉を交わすのは辻岡 真だ。ギルベルトの推し語りをワイン片手に促すものだから、饒舌には拍車が掛かる一方だ。紺碧の海色をした衣装はアオザイだろうか。海洋に居を構える彼らしい。
 色こそ赤いが似た趣の、こちらはチャイナ服を召したバレン=ベアース。右手には幼い見目にそぐわぬ煙管を。左手には同じくアルコールを満たしたグラスを。しかしどちらも慣れた手つきで嗜んでは空いた方でLino・A・Fontanaの頬を弄んでご機嫌だ。
 撓垂れかかる少年にも、突く指先にも、無表情を貫くLinoは前髪の下から順繰りそれぞれの顔を見ていた。耳もしっかり彼らの会話をワインの肴に。詰まる所、見た目に反して彼も十分に楽しんでいるのだった。

 外見もばらばらに。実年齢すらあやふやに。5人の男が思い思いに過ごす我が家のようなこの空間は、年の瀬に親族が顔を突き合わせて酒を飲んでいる風景に等しい。そして、それは半分正解であって真逆の幻想だ。
 『Vialatte Family』——混沌の闇に潜む組織、所謂マフィアのアジトのひとつ。それがこの屋敷の正体、彼らの身分を表すものだ。今宵、血よりも濃く重い掟が繋げた『家』で生存報告を兼ねて催された忘年会の真っ最中なのである。
 とは言え、酒を呷るのに正義も悪徳もありはしない。無礼講の免罪符の前では上も下もないように。行く年の無事を伝え、来る年の幸いを願う。生きるも死ぬも命ある以上は平等ならば、多少物騒な色こそあれ、何処にでもある在り来りなものと変わらない光景だった。
 こうして揃うのも年に一度のことだ、と次々と空いていく瓶の数。控えめな柱時計が幾度時を告げても、星座の支配する愉快な夜はまだ明けない。


 ※SS担当者:氷雀

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