イラストSS

　今宵はシャイネンナハトを祝うダンスパーティ、ラベンダーとビターチョコレートのドレスを纏った可憐なルミエールとフルールに男性達はこぞって私と是非踊ってくださいと手を差し伸べた。それを花を舞う蝶の様にひらりと手を振って二人は躱す。
「「ごめんなさいね」」
　綺麗な硝子の靴も、優しい王子様もいらない。
　だって目の前にそんなモノよりずっとずっと大切な人が居るのだもの！
　
　名残惜しそうに手を伸ばす男性達には目もくれず、二人はバルコニーへ出てみた。
　雪化粧をした庭はとても美しく、背後からはオーケストラの豪奢な音楽が二人を盛り立てる。ダンスホールには些か狭い気もするが、此処なら邪魔も入らない。

「今宵、私と踊ってくださる？」
　眠り姫の微笑みでルミエールが手を差し出した。
「ええ、勿論」
　妖精姫のはにかみでフルールが手を取った。

　シャイネンナハトのこの夜に。
　伝承に残るあの奇跡を思い描く。
　いつかきっと、例えそれがずっと先だったとしても。
　人々と魔種が手を取り合い共に生きる誰もが幸福な世界になりますように。
　御伽噺の中だけだと笑われたって、綺麗事と謗られたって。
　この奇跡を叶えたいと願うことは自由でしょう？


　※SS担当者：白