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猫耳メイド店とか聞いてねぇんだけれど????
イラストSS
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星でも月でもない、イルミネーションでチカチカと明るい夜。
先端に金の星をつけて、色とりどりの飾りをぶらさげて。電飾されたもみの木を白い綿のような雪が飾っている。赤い服に白い髭をつけた女の子が、赤い鼻のトナカイの着ぐるみを着た男性を連れて歩く。
今日はシャイネン・ナハトだ。
街のそこかしこで、浮かれたカップルがイベントの高揚感を味わっているに違いない。それなのに、俺たちは……。
上谷・零(p3p000277)がこっそりついたつもりの溜息を、武器商人(p3p001107)はしっかり聞き取っていた。
「ほらほら、上谷の旦那。スマイル、スマイル。どうしてここにいるのか、お忘れかい?」
零はひゅゅぅと息を細く吸い込んだ。
猫耳メイド服を着るの知ってたら、この場に居ねぇよ……と喚きたくなるのをぐっとこらえる。
ここは、練達にある地方都市の……商店街の端の猫耳メイド喫茶店。
ちょっぴりさみしくなった財布の中身を補充するため、まかない付という条件につられて飛び込んだバイトは、老若男女問わずメイド服に猫耳カチューシャをつけることが従業員の義務になっている飲食店だった。
ちなみに、時給は(とても)いい。
だから武器商人とくっつき合って、客に向かって無理やり笑顔を作る。
「はい、チーズ」
「「にゃん」」
ジャギだかチャカだが言う名前の、インスタントカメラのシャッターが切られた。
ちなみに、さっき二人で声を揃えて言ったのは、この店の合言葉のようなものだ。客に呼ばれたり、話しかけられるたびに「にゃん」と言うことになっている。
武器商人は仕事と割り切っているのか、それとももともとこういうノリが好きなのか、弾むような声で「にゃんにゃん」言っているが、俺は……。
つらい。
※SS担当者:そうすけ