イラストSS

●人の心人知らず
「……あれ、トカさん？」
「あぁ、タイムさん。お出かけ？」
　買い物帰りの道すがら、タイムとトカは偶然に鉢合わせした。

　にこやかに話すこと5分。
「さっきからすっごい顔でこっち見てる子がいるけど……」
「……ん？」
　耳打ちするタイムの視線の先で、ブルーブラッドの少女が大きな耳と尻尾の毛を逆立てて睨みつけている。
　あぁ、とトカは全てを悟る。
「ラウラだよ。うちの身内でね。」
　話を続ける間もなく、鬼のような形相でラウラが飛び出してくる。
「あなたねぇっ！　どこの誰だか知らないけど、トカと手を繋ぐなんてどういうつもりっ？」
「ラウラ、違うって……第一そんな勘違い、タイムさんに失礼だろう？　謝りなさい」
　勿論繋いでいないのだが、彼女の勘違いは止まらない。
「なぁんだトカさんの所の！　それなら一緒にお茶しましょ？　ね？」
「トカなんて、トカなんてねぇっ、手の爪がすごいんだからぁっ！！」
　心配するような仲じゃないと微笑むタイムと、それでも騒ぐラウラ。
「ふんぎーっ！！　騙されないんだからぁ！！」
　少女を右手で宥め、もう片方の手で彼女へのプレゼントを隠す。
　そのプレゼントで彼女が大喜びだったのは、また別のお話。


　※SS担当者：水野弥生