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残業
残業
イラストSS
「――っていうことがあったんスよ」
「いや、死んでいるではないか! 私が!」
積み上げられた書類のタワー越しにミミサキが言うと、ショッケン・ハイドリヒが振り返った。
書類のタワーのせいで顔が半分しか見えなかったが、それをずいっと掴んでひとブロックほど移動する。
ここはスチーラー鋼鉄帝国首都スチールグラード。
王城は派手にぶち壊したばかりなので、ギアバジリカの中である。
元々は聖堂として使われていたフロアだったらしいが、様々な理由から執務室へと変わっていた。
まあ、様々と言ったが理由はずいぶんシンプルだ。大きな机と大量の書類。そして同じような書類が大量に詰め込まれたであろう段ボール箱が部屋の半分ほどを埋め尽くしている。
その様子をいまいちど確かめて、ミミサキは渇いた笑いを浮かべる。
「いやあ、スチーラーには事務官はいないんスかねー」
「いるとも」
ショッケンは自分を指さしてから、次にミミサキを指さした。
「私と君だ。あとは全て戦士だな」
「皇帝は三人もいるのに!?」
厳密にはもっと事務方の人間はいるのだろうが、鋼鉄民には千人あるいは一万人にひとりいればいいほうだろう。
たははーと笑うミミサキ。『オフ会しましょー!』と部屋に入ったその一分後にはオフ回と称したブラック残業に引きずり混まれた身としては笑うしかない。
「いやなに、楽しい仕事だぞ」
「どうっスかねー?」
などと言いながら、ミミサキは笑った。つられたようにショッケンも笑う。
部屋の明かりは、きっと朝まで消えないだろう。
担当GM:黒筆墨汁