PandoraPartyProject

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アーリア・スピリッツの夜田によるおまけイラスト

イラストSS

 鉄帝の街は今日も蒸気と雪によって白く彩られていた。
 指を摺り合わせて寒さに身を縮こませれば、白い吐息が冬の冷たい空気に溶けて消えていく。寒さと切っても切れないこの国の商店エリアのとある一角にその店はある。
 ――スチームヘヴン。
 それが店の名前であった。

 今から大体三か月前のこと。
 開店間もないこの店は脱獄囚に襲われ、其処を四人の特異運命座標に救われたのである。店主はいたく感動し、その四人には特別に値引きをした酒を提供していた。
 そしてそれはシャイネンナハトだって変わらない。

「よく来てくれたなぁ!」
 店主が訪れた四人を迎え入れて扉を閉めた。
 閉めた扉に『Close』の札を掲げて、本日の営業を終了したことを知らせている。
 今夜、この店は麗しき四人の救世主の為だけに存在していた。

「本当にここのお酒は美味しいわねぇ、もっと飲んじゃいましょ!」
 ラベンダーの毛先を鮮やかなグリーンに染めつつアーリアは笑う。
 妖艶なイブニングドレスと白珠の肌とは裏腹に、その表情は今この瞬間が楽しくて仕方ないというような無邪気な少女の笑顔だった。
「なに? もしかして、もうできあがっちゃったの?」
 揶揄う様にゼファーがにっと口角を上げる。
 彼女は酒が飲めない年齢の為、所謂『ノンアルコールカクテル』を楽しんでいた。
 もっとも彼女の纏う蒼い風の様な雰囲気は、空色のカクテルドレスと相まってとても未成年には見えないのだが。
「なんだ二人して随分楽しそうじゃないか。此方のワインもなかなかイケるぞ!」
「ブレンダさん。そんなに勢いよくグラスを掲げたらワインが零れてしまいますよ」
 酒が程よく回った所為か、いつもよりもテンション高くブレンダが呼びかける。
 彼女の動きに合わせ注がれた葡萄色の水面と赤のアフタヌーンドレスの裾が揺れた。
 その様子に冬の夜の様に黒のイブニングドレスに身を包んだ正純はくすりと笑み零した。
「でも本当に皆さん楽しそう」
「そういう正純殿も楽しんでいる様だが?」
「ふふ、そう見えますか?」
「ああ」
 ブレンダがアーリアとゼファーに駆け寄り、その背中を正純は見送る。
 そして、口づけを落す様に黄金の輝きに目を細めながらグラスを傾けた。
 普段こういった洋酒とは縁がないが、この聖夜と仲間たちの笑顔を肴に飲む酒は格別に美味い。

 星の輝きがずっと私達を照らしてくれます様に。
 輝かんばかりのこの夜に、そう祈って――。


 ※SS担当者:白

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