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イラスト詳細

聖夜の夜会

作者 黒猫
人物 ウルズ・ウィムフォクシー
咲々宮 幻介
エルシア・クレンオータ
イラスト種別 3人ピンナップクリスマス2021
納品日 2021年12月24日

4  

イラストSS

 煌めくシャンデリアの光の下、眩い彩に満ちた夜会場。聖夜を楽しむ男女達は、グラスを傾け黄金の泡を揺らしている。
 この場に、幼いこどもは一人も居ない。プレゼントを配ってくれる妖精の夢を卒業した大人達は、愛だの恋だのを嘯いては囁きを交わす。
 タキシードやドレスに身を包んだ男女は、オーケストラによって奏でられる舞台での次のダンスのお相手を探す駆け引きに忙しい。
「お」
 まだ若い二人の男が目をつけたのは、くすくすと微笑みあう二人の美女。
 一人は艶ある茶髪を巻いたポニーテールを揺らし、太腿から胸元近くまで大きくスリットの開いた黒いドレス姿。真白のストールを羽織った肩は見えずとも、太腿に添えられた赤いリボンが自然と人の眼を惹きつけた。
 もう一方は、やわらかな長い金髪を三つ編みに流し、深紅のロングドレスを着こなしている。スパンコールの生地がきらきらと、オフショルダーで大きく開かれた胸元が視線を釘付けにしてしまう。
 美しい端正な貌と見事な肢体の女達を他に取られまいと、若者達はすぐさま近付いた。グラス片手に、声を掛けようとした寸前。
「あたし達、既に先約があるッス」
「ええ、とっても素敵な人が」
 男達が口を開くよりも先に、二人の美女は軽やかに青い誘いを断る。肩を落とした若者達に、チャレンジ精神は認めるッス、と一人は語り、ごめんなさい、と一人は優しく微笑んで。
 客人達が見守るなかで二人が向かった先には、この夜会の主催者が座る豪奢な肘掛け椅子。足を組んだ男は、長髪をオールバックに後ろで纏めている。
 あかい灼髪のひと房が目立って、狐顔は口元だけで笑みをこぼして美女達を出迎えた。
「二人とも頑張ったっていうのに、随分あっさり振ったな」
 幻介がいつもの御座る口調を封印すれば、ウルズは口をとがらせる。
「あたし達が先輩以外に目移りすると思ってるんスか?」
 くす、とエルシアはおかしそうに微笑む。
「おかしな冗談。それこそありえないでしょう」
 女達は男の座る椅子にしなだれかかり、そっと主催者に触れた。ウルズは男の顎下に指を這わせ、エルシアは彼の肩に腕をまわす。
 シャンパングラスがぶつかり合って、澄んだ音が鳴り響く。ひそり、侍る両手の花は男の耳元に唇を寄せて。
「聖夜はまだまだこれからッス」
「二人がかりで酔わせようなんて、そんなはしたないこと考えてませんよ?」
「うーん少しだけ嫌な予感がするで御座る」
 緑紫のふたいろと、ルビーの瞳に見つめられると、男の口調がいとも簡単に崩された。
 そう、本当にちょっぴり少しだけ。シャンパンの輝きが、聖夜の夜会場を更にとろかせる。


 ※SS担当者:遅咲

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