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煌めく夜の発見
煌めく夜の発見
イラストSS
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「……符の熱量は、これくらいでいいか」
長着の各所に懐炉代わりの符を仕込んで、自身の装備品をチェックするのは錬である。
確認は念入りに。それがまだ足りないと言われても否定できない。
……何せ、此度。彼が臨もうとしているその場所とは。
「タワー・オブ・シュペル。話には何度か聞いたことが在ったが……」
無辜なる混沌に於いて、その在り方を伝説と同一視されている術師の工房であるのだから。
切っ掛けは、本当に偶然。
シャイネン・ナハトの夜。街中を気まぐれのようにふらつく彼の姿を追って、辿り着いたのがまさにこの場所だった、と言うだけの事。
『存在すらもあやふやな彼』が、今日ばかりはこの塔に帰ってきているという事実は、錬にとって大きなものだった。
「……仮に踏破できれば、確実に会える、って事だしな」
無論、彼とて理解していること。此処が『最悪の試練』と呼ばれていることは。
それでも、その歩みを止めることは、きっと誰であろうと不可能だったであろう。
――だって。その憧れは、熱意は、誰にだって抱きうるもので。
「工房というよりダンジョンみたいだな。『最悪の試練』は伊達じゃないってか?
……まぁいい、それでこそ挑み甲斐があるってもんだ──!」
そして、塔の扉は開かれる。
*SS担当者:田辺正彦GM