イラスト詳細
『初めて識る、貴女の顔』
『初めて識る、貴女の顔』
イラストSS
彼女たちは剣士だ。
流派は違えど、研鑽を重ね切磋琢磨してきた彼女たちの間には、確かな絆があった。
それはこの世界に召喚されてからできた物だが、それでも絆が出来た事には違いなかった。
今ではお互いを友人と呼べるまでの仲になった。
彼女たちは友人だ。他人だけど、いくらか心を許しあえている。
だから、時々こんなこともしたくなるのだ。
「……っひ!?」
明るい茶色の髪色と同じ色合いの狼耳がピンとはねる。
彼女の頬には、友人の白い指が触れていた。
この季節柄も相まって、決して温かいとは言えないそれは、彼女を驚かせるには十分過ぎたらしい。
「ふふ、ごめんなさいね」
「なんなんですか、もう!」
くすくすと笑うその人に彼女は抗議の言葉を投げるが彼女は別に怒っているわけではない。
だから友人はその手を降ろすことはしない。
冷たい手と、彼女の暖かい頬の温度が溶け合って、混ざり合って、どこか心地いい。
こんなことを感じているのは私だけなのかしら。
いいや、きっと違うはず。
だから友人は直もその行為を続ける。
彼女たちは剣士だ。明日、命が散るかもしれない剣士だ。
だから互いの存在を確かめるように、今この一瞬を自分の魂に刻み付けるのだ。
ところで。
「これいつまで続けるんですか……?」
ため息一つ。宙へと消えてった言葉は友人には届かない。
*SS担当者:樹志岐NM