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シュバルツ=リッケンハルトの千乃 安倭による2人ピンナップクリスマス2020(横)
シュバルツ=リッケンハルトの千乃 安倭による2人ピンナップクリスマス2020(横)
イラストSS
月だけが灯りとなって、開けられた窓から部屋に差し込み、一人の青年の背中を照らしている。
外の喧噪とは関係ないと言わんばかりに静かなこの部屋で、左目に一本の傷跡を残す青年が逆十字のペンダントを持って座り込んでいた。
青年――――シュバルツは、ペンダントを見つめながら独り言を呟く。
「あいつが居たら、今頃何してたんだろうな」
大切に想っていた存在であるアマリリスの事を思い出す。
反転した彼女を助けに向かい、そして喪った恋人だ。
彼女を喪ったのは去年の夏。あれからもう一年半。
あの時の身体的な傷は癒えた。けれど、心の傷はどうか。
面影はまだ腕の中にある。あの柔らかな微笑みと共に、唇が紡いだ自分との会話も、最期の言葉も、耳に残っている。
思い出す度に、彼の顔は翳る。
胸の内の空虚が、寂しい表情を形作っていく。
「アマリリス」
名を呼ぶ。
シャイネン・ナハトのこの夜に、愛する彼女が居ない寂しさ。
彼の背中から、微笑みながら抱きしめる影。それは幻影か否か。
今欲しい温もりの代わりに逆十字のペンダントを握りしめて、青年は唇から言葉を零す。
その言葉が何かは、彼のみぞ知る。
*SS担当者:古里兎 握GM