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イラスト詳細

黒須 桜花のmriによるおまけイラスト

作者 mri
人物 黒須 桜花
イラスト種別 おまけイラスト(→元発注イラスト
納品日 2020年12月24日

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イラストSS

●吐き出す煙揺蕩いて
 光と輝きの夜を彩る喧騒は、点火音の極々小さな音を飲み込んでいった。
 同じくして街と象徴たる大樹彩る鮮やかな灯火からすれば、矮小な赤き輝きも誰も特に目を向けることもないだろう。
 紙に巻かれた干し草が発する煙を軽く吸い、吐き出す吐息の白に混じり紫煙が揺蕩い冬の澄んだ夜空へと溶け出していく。
 寒空の下、冬を乗り越えた先の象徴<桜花>を胸に誂えた女は緩やかに消え逝く紫煙を見送る。
 紙巻き煙草の先端が燃焼の寿命を終えた白き灰がはらり、はらりと落ちていく――それすらも聖なる夜に注ぐ雪に混じり地に落ちた一片はどちらかであったのかも判断はつくことはない。
 それでも冷たい白と熱の白は一つ、また一つと地面に落ちていく。
 吐息と共に吐き出す煙の白も、煙草のそれか放たれる吐息の熱かも分らぬまま、聖なる夜は等しく包み飲み込んでいく。
「はぁぁ……」
 もう幾度目かになる吐き出す息に逃げる幸せはあるのだろうか。
 ぼんやりと吸っては吐く紫煙と吐息の割合は後者を増やしていき――やがては紙巻煙草に干し草は消え、その吸い殻を灰皿へと置くと。
 春の色をした髪とその象徴たる花を誂えた女は往く。
 春色の中、聖夜の色をしたショールを翻しながら、煙一つ溶けだしていくように、彼女は聖夜に身を溶け込ましていくのだった。


 *SS担当者:表川プワゾンNM

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