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リゲル=アークライトのまれみちによる4人ピンナップクリスマス2020(横)
イラストSS
聖都フォン・ルーベルグの夜は輝きに満たされる。
雪降るその夜を照らすのは神々に捧げるための祈りの光。シャイネンナハトのための飾り付けは鮮やかな色彩を讃えて行く道を包み込んだ。
「寒いな」
「ああ、転ばないように」
微笑んだリゲルとポテトの背中を追いかけてイルは階段を恐る恐ると歩いて行く。
リンツァトルテが「足下に気をつけるように」と声を掛ければイルはこくりと頷いた。
大聖堂でのお祈りを終えた。憂う声も聞こえたが、それさえ無くなるような良い国を目指さねばならない。
あの『大災』より時が過ぎても、未だこの国には禍根が残っているのだ。この国の未来を思えば、担う責務は大きな物だ。
「リンツァ、イル。良い日だな」
「……ああ」
柔らかに微笑んだリンツァトルテを見遣ってからリゲルは真っ直ぐに彼を見上げた。
「嘗て、俺はリンツァに言った事があると思う。
『困ったことがあれば駆けつける』。その誓いは、思いは今も変わらない。……俺達はイレギュラーズで他の国へと往くことが多い。
そんなときに、この国の危機を真っ先に感じ取るのはリンツァと、イルだ。だから、何かあれば直ぐに教えてくれ」
リゲルの言葉にリンツァトルテは背筋をぴん、と伸ばして「ああ」と頷く。
「……でも」
――イルは「二人は、大変な仕事をしているだろう」と呟く。
確かに世界を走り回り、様々な事件をこなすイレギュラーズは多忙だ。故に、イルは二人に負担を掛けたくないと望んだのだろう。
「イル。友達なんだ。困った時は遠慮せずに言ってくれ」
「むぎゃ」
近付いて鼻をつん、と摘まめば少し間抜けな声を漏らす。小さく笑みを零してから、イルは「うん」と小さく頷いた。
「――皆で未来へと生きていこう。誰一人、欠けることがないように」
この美しい国の未来を守りたい。
戦の怒ることがない『平和』な夜だからこそ、改めて感じる。
「リゲル、ポテト。どうか無事で。……俺達が皆の代わりにこの国を守る。だが、危機に陥れば、やはり皆が必要だ」
「ああ。だから、留守を頼む」
「任せてくれ!」とリンツァトルテの言葉の前に飛び出したイルを受け止めてポテトは「転ぶぞ」と小さく笑った。
この国を思い、語り合えるこの夜の喜ばしく思いながら――
*SS担当者:夏あかねGM