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仙狸厄狩 汰磨羈の黒猫による2人ピンナップクリスマス2020(横)
仙狸厄狩 汰磨羈の黒猫による2人ピンナップクリスマス2020(横)
イラストSS
淡く舞い落ちる風花に、深雪の袂より立ち上る白きヴェールは白濁した温かなる湯より感ぜられた。
盆の上には徳利と猪口を。動きと共に揺らぐ水面に僅かに訪れた波紋は容易くも盆を攫い往く。
白い指先で其れを手繰り寄せた雪之丞は「如何ですか?」と柔らかな声音で問い掛けた。絹一つも纏わぬ雪色の肌は温泉のぬくもりで赤く色付いている。
「頂こうか」
笑み一つ、空になった猪口をそうと掲げた汰磨羈へと雪之丞は頷いた。
風流そのものの雪見酒。喉奥に滑り落ちていく温かな燗酒は喉を灼き、体の内側を暖める。露出した肩に触れる雪がやけに冷たく感じる気配にも笑みを零さずには居られない。
「雪の中、温泉というのは中々に心地よい物ですね。こうした中で飲む酒も乙なものでしょう」
「ああ。深々と降る雪と、凍えるような冬の寒ささえ何処へやら……。心地よさが勝ってくるよ」
はあ、と吐き出す息は真白に。汰磨羈の指先が湯を遊ぶ。小さく立った波紋に揺らいだ盆は容易く流されてしまうから。
手繰り寄せて雪之丞は湯の感覚を楽しむように深く温泉へとその身を浸す。肌全体を包み込む湯の感覚に酔い痴れて。
まだまだ降る雪は明日の朝にも残っているだろうか――?
*SS担当者:日下部あやめGM