PandoraPartyProject

イラスト詳細

書庫のシャイネンナハト2020

作者 黒猫
人物 レイリー=シュタイン
フラーゴラ・トラモント
アト・サイン
クレマァダ=コン=モスカ
ルクト・ナード
イラスト種別 5人ピンナップクリスマス2020(サイズアップ)
納品日 2020年12月24日

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イラストSS

 あまねく世界、人、歴史、文化を蒐集し続ける書庫。――その、屋上にて。
「こういうのもいいね」
「うむ。まあ……ちょっとばかし寒いが」
 ビールのジョッキを手に、既にほんのり頬を上気させたレイリー=シュタインの言葉に相槌を打ちながらクレマァダ=コン=モスカは鉄板の方へと手を伸ばす。レイリーと話しつつもちらちらとそちらへ視線を向けて――手づかみでひょいと取れそうなのはフランクフルトか。
 文化保存ギルド――皆は書庫と呼んでいる――での書庫シャイネンナハトパーティを今年はどうしようかという話が上がったのは先月の話。そして折角大人数ならば今年は室内ではなく屋外でやろうという提案の元、皆でBBQコンロや食材などを運んだのは朝の話である。日中と言えども冷え込むような1日ではあったが、雪がやんでいる間にと一同はBBQを、そして酒盛りを始めたのだった。
「お主も何か何か食べたらどうじゃ。ほれ、」
 とクレマァダがレイリーに示した先ではラムチョップを掴んで丸かじりするアト=サインと、そこへ更に勧めるフラーゴラ・トラモントの姿がある。ちなみにフラーゴラが持っていた皿はちょっと前までてんこ盛りに料理が盛られていたハズである。彼女も食べてはいるのだろうが、それ以上にアトが食べていると思う。未だってフラーゴラの差し出した皿からも頂きながら、まだ手元に残っているラムチョップを食べながら、且つ鉄板へ視線を向けているのだ。アトの食欲が伺える。そういえば去年も食い意地が張っていた。
「アトさん、こっちも……食べてみたけど、おいしかったよ……」
「お、そうなのか」
 じゃあ貰おうかな、と自身の勧めたものへ手を伸ばすアトにフラーゴラの尻尾が左右へパタパタと揺れているのだが――アトには見えていないだろう。きっと今その眼中にあるのは食べ物オンリーである。それでもフラーゴラは構わないし、これだけ近くでアトがもりもり食べる姿を見られるだけでも満足だ。今日もあなたがいるおかげで幸せです。
 その様子を眺めていたルクト・ナードはもっきゅもっきゅと今しがた口に入れた肉を咀嚼する。焼きたてのそれは歯ごたえも良く、塩味が良くきいている。更にこうして皆が楽しそうな雰囲気なれば、微笑みのひとつも浮かんでしまうものである。
(あちらはどうだろうか)
 ルクトが視線を左へ向ければ連理の枝――アレックス=E=フォルカスの姿が目に入る。彼もまたシャイネン・ナハトというひと時を楽しんでいる、いやこの空間を楽しんでいるようだ。外だからと長袖長ズボン、ファー付きのコートと温かそうに着込んだ彼の手にはグラスがひとつのみ。全く食べていないという事はないのだろうが、食事よりも雰囲気を楽しむつもりなのだろう。
 その目の前では楽しそうに笑う司書、ことイーリン・ジョーンズがいる。こちらもレイリー同様――それ以上だろうか、頬を上気させすっかり楽しくなってしまっているようである。リラックスしている良い証拠でもあるが、
「こちらもどうですかぁ?」
「あら、いいじゃない!」
 にんまりと笑みを浮かべながら酒を勧める鏡にイーリンはぱっと笑顔を浮かべる。恐らく彼女は今、どれだけ自分が酔っているかも分かっていないだろう。手元のグラスがあいたら頂こうかと話すイーリンは、もう片手に持っていた串焼きへ視線を向けた。
「それじゃあこれ食べる? 美味しいわよ。あとナゲットもそろそろいい頃合いじゃないかしら」
 ほら、と串焼きを差し出すイーリン。ちなみにナゲットはコンロの上で美味しく焼かれている最中である。
「そうですねぇ。ナゲットはもう少ししたら頂きましょうか」
 にっこり微笑んだ鏡とイーリンのやり取りに彼者誰は小さく苦笑を浮かべつつ何も言わない。ここは楽しいシャイネン・ナハトの場である。イーリンも鏡も楽しそうであるし、わざわざ止める必要も無いだろう。……明日はどうなっているかわからないが。
 彼者誰は酒のボトルを手に視線を巡らせる。イーリンは鏡からもらったものがあるから必要ないだろう。レイリーはジョッキなだけあってまだまだ酒が残っていそうだ。アトとフラーゴラ、ルクトは主に食べまくっているし――と順に見ていた彼者誰の視線に留まったのはアレックスである。
「お注ぎしましょうか?」
「ん、……ああ、そうだな」
 アレックスは彼者誰を見て、それから手元のグラスを見て、減っていたことにようやく気付いたらしい。頷いて差し出されたグラスに彼者誰は飲み物を注いだ。
「あ」
 不意に声を漏らしたのはレイリーである。一同の視線が向く中で彼女は「乾杯、もう1回しない?」と提案した。
 乾杯だけなら最初に皆でしたのだが、去年同様に『乾杯!』で済ませてしまったのである。つまるところ、やはり去年に倣ってもう一度、この世界らしい掛け声で乾杯すべきだろうかと。
「そんなこともあったね」
「いいんじゃない? ほらアト、食べ物じゃなくてグラスを持って」
 思い返すアトにイーリンが急かし、皆がグラスを取る。同じようにグラスを手にしたクレマァダはふと目を細めた。
(去年は我(カタラァナ)がいたと聞いたが)
 まさか今年は自身がここに来ようとは。偶然か、必然か、定かではないけれども――そんな胸中いざ知らず、皆でグラスを掲げこう告げよう。

「「「「「「「「「輝かんばかりの、この夜に!」」」」」」」」」


 *SS担当者:愁GM

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