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うみのむこうから
うみのむこうから
イラストSS
●うみのむこうから
豊穣の地にも雪が降りつもる。吐いた息が白く染まる。
されどそれは慧と百華、幼馴染であり命の恩人でもある主従の交流の場においては些細な事。
「主さん、これ」
短く告げ慧が取り出した小箱に百華は息を呑む。
紐で大切に縛られたその箱の色は百華の髪の色と同じ珊瑚色。
「けーちゃん、これってクリスマスプレゼントって奴?」
「まあ、そんなとこっす」
彼らにとっては遠かった世界――外界からの土産を片手に、慧はぽつりと。
「主さん、前に海の向こうのネイルが綺麗で欲しいっていってたっすから」
「けーちゃん……」
俯き、箱をゆっくりと受け取った百華は僅かな沈黙の後。
「なんだ、綺麗な指輪かと思ってびっくりしちゃった」
「なんすか、それ」
他愛のない冗談、流れる暖かい空気。信頼し合う二人の強い絆が、確かにそこにあった。
「ありがとね、けーちゃん」
明るさを増した百華の声に慧が頷き、二人は道を隣り合って歩いていく。
「こっちは私がなんとかしとくから、けーちゃんも神使の仕事、がんばってね」
「ああ――主さんがくれた慧(おれのな)に相応しい人間になって見せるっすよ」
どこまでも、その道は続いていく気がした。
*SS担当者:塩魔法使いGM