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メルナのくらいによるシングルピンナップクリスマス2020(横)
メルナのくらいによるシングルピンナップクリスマス2020(横)
イラストSS
――これは夢だ。
メルナには分かっていた。
薄暗い場所を『メルナ』は歩いている。物音一つしない、死んだような場所だ。
しばらくすると聖堂に着いた。そこは廃墟だった。屋根も壁も荒れ放題で、扉は片方取れて無くなっている。
彼女は入り口を塞ぐ石片をまたいで内部に入った。身廊を真っ直ぐ、祭壇へと進む。
砂や埃や、割れたガラスが靴の下でじゃりじゃりと鳴った。
暗がりに僅かな光のみが差し込んで、割れたステンドグラスの輪郭を縁取っている。整然と並んだ椅子は折れたり足が無くなったり、一つも座れるものが無い。
汚れた皿や空のグラス、壊れた玩具――
どこか欠けたモノが散乱する聖堂内を真っ直ぐ通り抜けて、彼女は祭壇の裏を覗いた。そこにも壊れたモノ――動かない少年の死体が一つ、転がっている。
彼女は祭壇の上に座った。降り積もった汚れが青いドレスを穢す。
そんな不気味さを感じる場所で。大切な存在を失った少女は一人、空虚に笑った。
『──此処にはもう、何もないの』
遠くで、聖なる日を寿ぐ鐘が鳴っている。
もうすぐ目を覚まさなきゃ――
*SS担当者:乃科GM