イラストSS

「お酒美味しい、えす」
「……」
　先ほどからゆらゆらとし始めた廻が陽気に笑い出す。
　徳利を持った廻は日本酒をお猪口に注いだ。
　僅かに零れた雫は廻の指先に落ちる。それをぺろりと舐め取って、お猪口の中身を一気に飲み干した。
「こらこら、飲み過ぎだ。廻」
　空になった徳利を見つめて暁月はフラフラしている廻の肩を支える。
「まら、のめまふよ～っ」
　頬を膨らませた廻は、駄々を捏ねるように首を横に振った。

　廻が次の徳利に手を伸ばし、お猪口に注ごうとするのを暁月が制止する。
「駄目だぞ。ほらもうお終いにしなさい」
　お猪口を持った右手を押さえ込む暁月。
「や～ら～。もっと呑む～！」
　暁月に押さえられたのに抵抗して、廻が肩を振れば徳利の酒が食卓に零れた。
　甘える子供のように後ろへ倒れ込もうとする廻を支える暁月。
「危ないから。後ろに倒れるんじゃあない」
「だって～！　まだ飲めるんですよお！」
　暁月は頬を膨らませる廻の徳利とお猪口を奪い食卓に置く。
　あまり不満を漏らさない廻はこうしてお酒で発散させる所があるのだ。
　何か不安な事があるのだろう。
　緩く抱きしめて「何があった」と問えば、少しだけ眉を下げて首を振る。
「うぅ……」
　心配を掛けたくないと思うけれど『親』である暁月には敵わないのだと温もりに縋った。

※担当GM『もみじ』