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無邪気で温かい一時を
無邪気で温かい一時を
イラストSS
カップから昇った白が踊る。その湯気がジルとポシェティケトの色彩を淡く、なめらかなものにしていた。
ツリーやリースが飾られた華やかな空間だというのに、なぜだかほっとする心地を覚える。
それでも童女のような、何事も珍しく新鮮に感じる無邪気さは二人の会話を弾ませていくばかりだ。ジルの紡ぐ薬の話、植物の知識。言葉交わしては微笑みあい、時々菓子で口福を得る。ポシェティケトの膝上でお腹を満たすクララも、そんな二人を見上げて寛いでいた。
「ジル。あなた、ほっぺたにお菓子ついてるわよ」
「えっ、どこっすか?」
光の粒をふんだんに宿した双眸が、ぱちぱちと大きく驚く。
だからポシェティケトは眦を和らげ、ここ、と自らの頬で位置を示してみせる。
「ここっすか! ……あれ?」
ジルの細長い指先はカップの温もりを離れ、片頬をさすった。
しかし食べかけの一欠片へ触れることすら叶わずに。
「ふふ、残念。反対のほっぺたよ」
ポシェティケトが囁くと、もひもひと菓子を頬張っていたクララの眼差しも、その位置を指摘する。
おかげでジルが二度目の瞬きをしたのち、満咲薬局には二人の温かな笑い声が咲いた。
*SS担当者:棟方ろかGM