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聖贄遊戯
イラストSS
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――とっても美味しいご馳走が在るんだ。
ソアがマルベートをそのような文言で誘ったシャイネン・ナハトの夜。
自らが住まう館を訪れたソアを笑顔で迎え入れたマルベートは、そのまま館の一室へと彼女を誘い入れて。
「そっ、ソアさん!? お願いします、助けてください!」
果たして。
通された部屋の中央には、裸身をリボンで縛られたリディアが、円卓に乗せられていた。
「……えっと、マルベートさん?」
「うん?」
『これ』が? と視線で問うたソアに対し、マルベートは笑顔のまま。
「リディアを初めて見た時からね。ずっと思ってたの。美味しそう、って。
だからこの子も今日、夕食に誘って――食事にちょちょっとね」
「私未成年なんですけど!?」
「大丈夫、お酒じゃなくて、ちゃんと『合法』のヤツ」
「より怖いです!」
必死で拘束をほどこうとするリディアであるも、一体どんな細工が施されているのか、リボンはリディアの柔肌に微かな赤い痕を残すのみで、傷つく様子は微塵も無い。
……即ち。此処に居るのは、被食を待つ哀れな仔羊に他ならず。
「ソアは、どう?
この子をほんの少しでも、味わってみたいと思わない?」
「……そう、だね」
はい!? と瞠目するリディアの、縛られている腕。
それを優しく持ち上げたソアは、つぷ、と自分の犬歯を食い込ませる。
傷も残らない甘噛みに、しかし対するリディアの怯えっぷりは目に見えて明らかで……だからこそ、それを目の当たりにするソアの嗜虐心が、彼女の人間に対する隣人愛を上回る。
ソアの反応に気をよくしたマルベートは、円卓に予め置いておいたお気に入りのソースをリディアにかけていく。
少量を乗せ、指先で薄く延ばして。調味料単体からでも香る美味しそうな匂いが、逆にこれからの自分を暗示するかのようで、リディアは。
「……ねえ、ほどいてあげようか?」
リディアは、恐れていると同時に――何かを、期待しても居た。
「『ほんの冗談のつもりだったんだ』。『私もソアも、嫌がる子を無理やり食べたりしないよ』。『だから、嫌ならそう言ってくれれば、直ぐに解放してあげるから』」
――ああ、でも、と。
「もし嫌がらないなら、とっても優しく、たっぷり愛して……溶かすように、食べてあげる」
恐怖に濡れていたリディアの瞳は、今やマルベートの二、三言と、肌を伝うソアの指先によって、別の色を帯びている。
「……わ、わたし、は」
微笑む捕食者二人に対して、リディアは『その一言』を口にした。
*SS担当者:田辺正彦GM