イラスト詳細
……いいなあ。
……いいなあ。
イラストSS
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色々欲しいものはいろいろあるけれど。
買うかどうか迷いながら、イルミネーションにきらめく街をコートの給を立てて一人で歩いていた。
予想どおり、おひとり様クリスマス。いま一番欲しいものは――。
「いいなあ……」
フェリシア=ベルトゥーロはすれ違ってから振り返り、どこかへ急ぐ若い家族を見送った。シャイネンナハトの買い物をすませ、家に帰るのだろうか。それとも予約してあったレストランへ?
「わたしも、ああいう風に歩いていたこと、あったのかな……」
フェリシアの上にも、遠ざかっていく親子の上にも、等しく雪は降る。純白のパウダースノーが、深海に降る雪のようにゆっくりと、スローモーションで落ちてくる。
(「いつか思い出す日がくる、のかな……」)
家族のことも、友だちのことも。自分の本当の年も、誕生日も。
いま感じている心の震えは、祈りに似ている。心を半分どこかに残したまま、わたしはここにいる。
だけど、それを不安に思うことは少なくなってきた。
運命特異点として過ごす日々が、一日、一日と過ぎるたびに思い出になっていくから。それは失われた記憶を埋めてはくれないけれど、希望と温もりを与えてくれる。
フェリシアは前を向いて歩きだした。
耳を澄ませていよう。心の奥底で、大切な何かが降り積もる音に――。
*SS担当者:そうすけGM