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唇も温もりも
唇も温もりも
イラストSS
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あのシャイネンナハトから三年たった。
三年たっても、というか、日々好きを更新しているので変わらず互いが愛しい人だ。
そう。変わったのは三年で育んできた愛の累積値くらいなものだ。日々増量中である。
「QZさま」
いつかの木の下でまろうは柔らかく笑みを浮かべていて、むせかえるような針葉樹の香りが脳髄にしみこんでくる。
絡めた指先から伝わる温かさはシンと冷え切った空気の中で尊くさえ感じた。
もっと近く。
互いの背中に腕を回し、互いを抱きすくめて、見かわす互いの瞳に祈りと愛を見る。
「これまでずぅっと、QZさまに、幸せをわけていただいてきて――」
ホロホロと言葉をこぼすまろうの息をクィニーの唇が引き取った。
今、舌を動かすのは、言葉を紡ぐためではない。
この樹の下でキスをした二人は幸福になる……という、ありがちな伝説。
キスが儀式になるなら、真摯に執り行おう。
改めて互いの幸せを祈るように。改めて互いへの愛を誓うように。
ありがちでありふれた幸せこそ大切なものだと信じて、そっと重ね合わせた唇と溶け合う吐息で胸の中を想いをありったけ伝え合おう。
*SS担当者:田奈アガサGM