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【Scheinen Nacht2020】輝かんばかりの、この夜に【3】

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 ――と、言うわけで。
 今宵のエルスは傷心気味だ。ヤケ酒するしかないのだ。『あの方』が居なくったってシャイネンナハトをこんなにも楽しめるのだとアピールしてやらねばならない。
 あらすじを簡潔に伝えようか。勝負に負けたエルス・ティーネ。
 折角の聖なる夜――だというのに今宵は愛しき『あの方』をデートに誘うことに失敗していたのだった。
 それでもいいとエルスは叫ぶ。日中はファレンやフィオナと共に書類を片付け、ハウザーやイルナスとの夕餉の約束をしていた。
 ラサの重鎮をリレーして、満喫してこれで『残念な夜』になる筈がないのだ。寧ろ、ラサご満足セットだと言いたい。
 言いたい、が、「私たちでいいんですか?」と困り顔でったイルナスに「酒か!?」と飛び込んでくるハウザー。二人にも何かを見透かされている気がしてエルスは約束の場所まで項垂れながらやってきた。

「――今日はヤケ酒ですよ! デートに誘うの失敗しちゃったんですもの!」
「誰をだ?」
「ええ、誰をでしょう?」
「誰を……? そんなの秘密です、いくらお二人でもお話する事は出来ませんね!」
 勢いよく酒を煽り続けるエルス。普段ならば「そんなの知ってらっしゃる癖に」なんて言いたくなる所だが酒が回ってかそんなことを気に留める事もしない。
 イルナスは「まあ、どこぞの『赤犬』なのでしょうけれど」と囁き、適当なつまみを口へと放り込む。
「なッ――」
「そういや、アイツは今晩どうだったかな」
「どうしてお二人共知って……ッッ!!」
 意地の悪い笑顔を浮かべた二人を恨みがましい表情で見つめたエルスは――息を飲んでぴたりと動きを止めた。
「って、なんでディルク様がここに?!」
「来ちゃ悪いのかよ」
「いえ、悪い事は何一つありませんがッッ?!?!」
 大慌てで立ち上がったエルスをイルナスとハウザーが愉快だとでもいう様に見やる。
 その視線だけでも彼等がディルクに声をかけて置いたことを察することができて……。
「も、もう、イルナス様! ハウザー様!」
「ふふ。今日はシャイネンナハトですからね」
「ああ、飲まなきゃ勿体ねェだろ?」
 二人に掌の上で転がされて弄ばれたのは……きっと、気の所為じゃないのだ。


 *SS担当者:夏あかねGM

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