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楊枝 茄子子の冬在によるおまけイラスト
楊枝 茄子子の冬在によるおまけイラスト
イラストSS
●片思い
その恋が笑われた事は少なくなかった。
曰く年齢差を考えろ。
曰く身分の差が有り過ぎる。
言うに事欠いて「え? 冗談だよね?」。
しかし、誰が聞いても俄に信じ難いようなその『恋』は確かに楊枝 茄子子(p3p008356)の中に燃えていた。
子供の頃、フォン・ルーベルグでの演説を聞いた時から少しも迷った事は無かったのだ。少しもその想いを疑った瞬間等無かったのだ。
『年相応らしからぬ恋は、年相応らしからぬ茄子子を年相応に縛り付けていた』。
シェアキム・R・V・フェネスト(p3n000135)は彼女の初恋であり、執着の全てである。家を飛び出し、国家転覆計画を胸に抱く少女の原動力に他ならないのであった。
「……どうした、茄子子」
「えっと、会長は! じゃない!
……私、少しぼうっとしておりまして……申し訳ありません」
茄子子は飛び出しそうになる感嘆符を抑えつける事に苦慮していた。
幾つかの偶然から共に視察をする事になった幸運に、茄子子は被れるだけの猫を被っている。
(シェアキム……少し機嫌がいいみたい)
肖像の中のシェアキムは笑ってくれないけれど、今彼女の隣を行く彼は聖夜の街の様子と慌てた茄子子に薄く微笑んでいるかのようにも見えた。
(こんな風にするのは嫌じゃないのかな?)
乙女心がざわざわする。
(……意外と楽しかったりするのかな?)
都合が良いと分かってはいたけれど。
「……茄子子」
「は、はい」
「視察の後は宮殿に寄るがいい。
聖夜は菓子も振る舞われるそうだ。
貴殿は甘いものはお嫌いかな――?」
茄子子の気持ちを知ってかしらずか今日のシェアキムは饒舌だ。