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だが姉さんの雪だるまが最強だ
イラストSS
ある晴れた日の一幕。
きらきらと太陽の光が優しく一面の雪景色を照らす中、三人の若者がそれぞれに思い思いの雪だるまを作りあげ、見せあっていた。開催されているのは「誰が一番すごい雪だるまを作れるか選手権」。幸い材料の雪は尽きぬほどにある。
そんな三人が作りあげた雪だるまは――。
一つは雪で作られたエナガ。ぽってりとした体つきにちょこんとした口。黄色い目に、小さな脚。暖かそうなコートを着た作り手のノースポールは楽しげに形を整え、どうかな? と言いたげに二人を見る。
「優勝だね、雪エナガだし」
「うむ、最も素晴らしい雪だるまは姉さんのに決まっている」
即答する二人はノースポールの婚約者であるルチアーノと弟のネージュ。ノースポールは雪原に開く花のように微笑み、二人を見る。
「嬉しい! ねえ、二人のも見せてくれないかな」
二人の男は待ってましたとばかりに、ノースポールへ自分達の雪だるまを見せ始める。負けられない戦いが始まった……!
ルチアーノの側にいたのは、三色柄のマフラーを首に巻き、花を飾ったシルクハットを斜にかぶせた中くらいの雪だるま。丸い黒目に、鼻はオーソドックスな人参製。
「どうかな、ポー、綺麗でかわいいよね?」
すまし顔の中に自信を溢れさせたルチアーノは、にやりと横にいるネージュを挑発半分、からかい半分で見る。
「この子のマフラーはね、僕のいた国の旗に似せた物なんだ――それでね――」
君よ知るや南の国、故郷の冬の景色や風習について語ろうとしたルチアーノであったが、ふいに言葉を遮られた。
「いーや、凄いのは俺のだ! なにせデカい! デカければ強い!」
自信満々にネージュが見せた雪だるまは。
大きかった。
お玉の鼻を中心から生やし、視点は合わず、猫のヒゲめいた枝が顔から生えている。
ありていに言えば、不細工であったが――それは確かに大きかった。具体的には、ネージュの肩ほどまであった。
「大きさは認めるよ? だけど、やっぱり見た目だろう? ね、ポー」
「いいや強さだ。な、姉さん? そうだよな?」
やんややんやと言い合う二人に、ノースポールはにっこりと笑んで、告げる。
「ルークのもネルのも素敵だから選べないよ、だから二人に投票しちゃう!」
かくして「誰が一番すごい雪だるまを作れるか選手権」の順位は決まり、三人の楽しい冬の日は続く――。
*SS担当者:ろばたにスエノNM