イラストSS

「輝かんばかりの、この夜に……ですわー！」
　シスター・テレジア、燈堂 廻、ストレリチアの3人は共に酒瓶（とストロー）を掲げ、乾杯の合図をとった。
　直後、テレジアは瓶からラッパ飲みし、廻はジョッキを半ばほど干し、ストレリチアはストローで瓶の半分ほどを飲み干す。
　酒気溢れる吐息を吐き出した3人は満足気に互いを見て、笑った。
「ストレリチアさん、残りはストローで吸えないですからジョッキに注ぎますよ、ほらグッと」
「おっとっとっと……ありがとうなの！　この泡具合がたまんねーの！」
「廻様、案外イケますのね！　ワインもありますわよ！」
「いえいえ、テレジアさんこそどうですか、こっちのお酒とか珍しいようですけど……」
　率直に言うと、廻は気配りが出来て自制心があり、2人の仲間へ酌をしたり酒を勧めたりつまみを頼んで見たりとせわしなく視線を巡らせていた。だが、酒気が入った状態で思考を巡らせるのは酒の回りを早くする。酒が贔屓目にも強くない彼に、気遣いという性格は鬼門だった。
　他方、テレジアは己の肝臓と自制心にブレーキがなく、ストレリチアは自分の限界というものを理解していない。
　欲求に素直な2人は酒にしか目が行っていないので、廻がつまみを頼む役割を担うわけで、やれミックスナッツだポテサラだ刺身だモツ煮だ、そこはサラダも欲しくありませんこと？
などと活発な議論が――何の酒に何の肴を当てようか議論が――交わされるわけで。
「まあ！　廻様の杯が乾いておりましてよ！　そーれ飲んで飲んで！」
「ウィスキーならチョコも乾き物もいい感じに合うの！　スッキリ飲む時はさいこーなの！」
「あっ、有難うございま、ってこれはちょっと多……」
「気にしてはいけませんわー！」
　溢れんばかりの勢いでウィスキーと割材をぶち込まれる杯に慌てる廻の傍らに、ストレリチアが全身を使って乾物盛り合わせの皿を押し込んでくる。流されるままに口をつけた彼は、しかし舌から喉に流れ込むスモーキーな香りと芳醇な味わいに目を瞬かせた。別にウィスキーは初体験ではなかろうが、テレジアのチョイスが良すぎたのだ。
「顔が赤いですけどまだまだイケますわね！　そーれ飲んで飲んでー♪」
「ふふ、楽しくなってきますね……！」
「いい感じなの！　もっとグイッといっとくの！　夜はまだまだ長いの！」

「それでですねぇ、暁月さんてば……聞いてますかぁ？」
「げーーーーーーっふ。聞いてますわよ廻様ぁ、大丈夫ですからその辺で」
「いいえまだまだ話したいことが沢山あってですねぇ、あんなことやこんなことが」
「すっかり出来上がってるの。テレジアもまだまだ飲むの」
　まあこんな感じで。廻にあらん限りに呑ませた代償として、テレジアは彼に一晩絡まれることになるのだが、それはまた別の話だ。


　＊SS担当者：ふみのGM