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モノクロ・ナイトコンサート
モノクロ・ナイトコンサート
イラストSS
月光が世界を照らす。白い雪が世界を染める。
銀世界の中に輝く、湖。マルベートの居邸である『黒睡蓮の館』に存在するその湖のほとり。
水の中に浮かぶ月、空に浮かぶ月。空から降り下りる雪。湖に降り積もる雪。
白。銀。蒼。光。
その世界の中心にいたのは、二人の演奏者だ。
響くヴァイオリンの音。心震わせる旋律に、後を追うように続く、フルートの音色。
二人の奏者の観客は、この時、お互い一人だけ。二人の奏者と、二人の観客。完成されたそれだけの世界に、完成された二人だけの曲が鳴り響く。
香る、甘やかな花の香り。それが、マルベートの鼻孔をくすぐった。愛しい音色。愛しい香り。それが聞こえるだけで、それが香るだけで、マルベートの頬に朱が差す。
寒くはない。むしろ暖かだった。触れるとも触れぬとも、二人のその距離、そこから感じるお互いの熱。そして自らの発する熱だけで、事足りた。
頬を濡らす、雪。それが、体温によって溶けていく。つ、と涙のように、頬を伝う。雪。それは歓喜の涙か。
二人は触れない。触れなくともつながっている――演奏は続く。この素晴らしき夜に。輝かんばかりのこの夜に。永遠に(ずっと)、永遠に(ずっと)――。
*SS担当者:洗井落雲GM