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花畑での出来事を僕は忘れない
花畑での出来事を僕は忘れない
イラストSS
夢のようであった。
ステファンの眼前に広がっていた神秘なる光景をなんと表現したものか。
ヴァイス。人形としての生を、しかし人と変わりなき意思を持つ彼女が純白にて。
目の前にいる。
汚れ無き衣類。汚れ無き毛髪。汚れ無き肌――
花畑。天より注ぐ光が雲より零れて。
『天使の梯子』なる現象をそこへ。
見惚れる、とはこの一瞬の事を言うのであろうか。
されどかような思考に至る暇もなく――ステファンは心の底まで透き通る様な感覚の中で。
ヴァイスをただ見つめていた。
ほんのり開いた口元の感覚にも気付かず。
ただただ只管に。
紡いだ花弁の連鎖が花冠となりて。
ヴァイスは崩れぬ様に、壊れぬ程に優しくソレを両手で支える。
――風が舞った。
地に咲く白き花の花弁が散って、風の流れに付いていく様に舞い上がり。
二人の間を抜けていく。
揺れる花冠。中央の輪越しにステファンの顔を見つめて。
微笑む様は正しく――天使の梯子より降り立った使いが如く。
此処にだけ在る、純白の存在。
白き翼のステファンに、白き衣を纏いしヴァイス。繋ぐ花冠で触れ合って。
ああ。
それはまるで――花畑の天使のようであったのだ。
※担当『茶零四』