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聖夜の窓際で
聖夜の窓際で
イラストSS
ピアノの音が途切れてカーテンがかすかに動き、内側のレースが開いたままになった。暖かそうなウールのカーデガンを着た彼が、窓の外から注がれる熱い視線に気づいて振り向く。
リトル・リリーは、その小さな体からは考えられないほど大きな大声を出して、窓のガラスを震わせた。
「はーい♪ フローエ・シャイネン・ナハト♪ ぼっちさんを連れだしに来たよ」
彼は口を微かにあけたまま、窓ガラスに胸を張りつかせた雨宮 利香とリトルとをじっと見つめる。そこに見えるものが信じられなくて。
彼は十二月のイルミネーションを憎む人種のひとりであり、あの狂乱のシャイネンナハトソングを聞かないですむように、一人ピアノを鳴らす孤独な音楽家。今夜、内を尋ねてくる人はいない。
「あの……私、私たち、怪しいものじゃありません。輝く夜に温もりを……届けに来ました」
「イルミネーションがとってもきれいだよ。ね、外に出てこない? こもっていたら出会いなんて一生ないぞ。リリーたちと一緒に過ごそう。」
「私は別にベッド……いえ、お部屋で過ごしても構いませんが。とりあえず、窓をあけてくれませんか?」
彼は口を閉じると、カーデガンの袖を引っ張り下した。
意を決したように椅子から立ちあがり――。
果たして彼は、利香とリトルとともに街へ出たのか、それとも彼女たちを家の中に迎え入れたのか。
それはナイショ。
※担当『そうすけ』