イラストSS

　とても眠かったんだ。それはもう、溺れる程に。
　立ち並ぶはケーキ。ブッシュドノエルやショートケーキ、飾りも済んでさぁこれから――
　と言う時に、ベークは睡魔に負けてしまった。
　机に突っ伏す形で瞼を閉じている。疲れたのか、待ちきれなかったのか。
　ある一室でベークは静かに、その身を机に預けていて。
「もしも～し……ベーク……？」
　その時、人の身に変じているベークに声を掛けるのはタルトだ。
　やってきたのだが瞼を閉じる彼の様子を見て安易に起こせず。静かに、軽く声を一つ。
　――よく寝ている。ケーキの数々を作るのに全力を果たしたのか。
　近付けば聞こえて来るは彼の寝息。彼の横顔。
「……、……」
　リズムと共に身体も揺れる。深い呼吸が彼の眠りの深度でもあり。
　――起こすに忍びない。
　そう思考し。しかし視線を部屋に巡らせば、タルトはベークの心を感じる。
　用意したのだこれ程までに。共に祝う、今日この日の為に。
　だから、か。タルトはただ感謝の意を込めて――
「――」

　ベークに近付き、ほんの微かな口づけを。

　ベークが起きぬ様に。しかし確かな感謝の印を――その頬へ。
　感じるは体温。冬の寒さの中にも確かにある、互いが此処にいる証。
　貴方へ送る私の心。貴方へ送る私の――祝福。

※担当『茶零四』