イラストSS

　ガタガタッ！
　窓が不自然に鳴っている気がする。
（大丈夫だ、窓だってしっかり閉めた。何かが訪れるはずがないんだ）
　矢都花 リリーが話していた赤い悪魔がショウの脳裏を過る。
（オレは絶対迎え入れたりはしないよ）
　外は寒いからホットミルクを差し入れるくらいならやぶさかではないが。

　しかし、時はきたれり。

　──しゃいね～ん！

　グワッシャーン！
「！！？？」
　猫らしく瞬時にボワッと逆立った耳と尻尾。
　しっかり締めたはずの窓のガラスは弾け飛び、咄嗟に身を捻った反射神経に救われた。彼の脇腹を掠った一撃は安寧の寝床を布団ごとえぐっていた。
「あ……ッ」
　窓の外から細く声が聞こえた気がした。
　──バールだ、バールがあればすべてかいけつできるのだよぉ……。

　夜空の下、リリーは己の善行の結果を満足げに眺めた。
　ヤドカリ帽子を赤白に整えて今日の彼女はすっかり聖夜の使者。
　お届けした役立つバールにはちゃんと赤と緑で粋に染まったリボンも巻いてある。
　手渡ししても良かったが、ニートの彼女は諸々ちょびっと面倒になったのだ。
　歓喜の（？）絶叫を聞きながらご機嫌のリリーは帰ってゆく。
　さあ、愛に満ちたよき夜を！

※担当『依』