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「今はもう、家族だから」
イラストSS
シャイネンナハトの夜は長い。
いつもの夜よりずっと、ずっと。
何が違うのだろうと、リアはテーブルに並んだお皿を片付けながら考えた。
いつもと違うのはお皿の数。
街の子供たちを呼んで前夜祭をして、ケーキと丸焼きの鶏とチョコレートナッツのお菓子をいっぱい食べてご満悦の子供たちを見て、バイオリンをひきながらみんなで聖歌を歌って……。
「あ、そうか……」
闇が深いほど光が強く見えるように、賑やかな昼があるほど夜が静かに思えるのだ。そして静かであるほど、時間が長く細く。
頭のまんなかからこめかみへ音なき音が抜けるように、昼間に奏でた音楽が再生されるようだ。
いつまでも終わらないサビのメロディを鼻歌にしながら、リアは雪降る夜を通り抜ける。
寂しい夜の過ごし方を、リアは知っているつもりだった。
ひとりきりの時間を楽しむすべも、知っていた。
けれど不思議だ。
この短い間に、一人きりで過ごす時間の冷たさが増したような気がしてならない。
その理由は、分かっている。
シャイネンナハトの夜が長いように、自分は沢山の人とふれ合い、人生を賑やかにしてきたからだ。昼の賑やかさが、数年前とはずいぶん違う。
さて、こんな夜をどう過ごそう。
リアが物思いにふけっていると。
「待たせたな!」
と言いながら、何者かが玄関のドアに激突した……音だけがした。
「…………ええと」
びくっとしつつもドアに近づき、そっと開いてみるリア。
額を赤くしたクロバが、雪のふる地面にしりもちをついていた。
「……あ」
顔をあげ、慌てて立ち上がり咳払いをしてから、壁に手を突いてハンサムに笑うクロバ。
「またせたなっ」
なるほど颯爽と部屋に飛び込もうとして鍵に阻まれたな。
と察しはしたもの、リアは優しい苦笑でこたえた。
「随分黒いサンタさんね」
「だいじょーぶ、赤いサンタもちゃんといるよっ」
暖かそうな格好をした氷彗が、クロバの後ろから顔をだす。
「メリークリスマス! はいこれ、リアにプレゼント! 皆に配って回ってるんだよ」
「みんなにって……」
毎回あの『またせたな』をやって回っていたのだろうかと思い、そしてやりかねないなとも思い、リアは苦笑をもう一段階深くした。
「ね、このあとヒマなら一緒に回らない? 服もあるよ」
どうかな? と小首をかしげる氷彗。
荷物持ちは任せろって顔をしているクロバ。
「そうね……それじゃあ……」
昼が賑やかなほど夜は冷たく静かなもの。
けれどなぜだろう。
最近は、夜まで賑やかで仕方ない。
※担当GM『黒筆墨汁』