イラストSS

　静かに雪降る夜、番傘の中にうつる影は二つ。
「……冬佳さん、寒くないかな？」
「はい、大丈夫ですよ」
　そう微笑み合う二人は酒々井 千歳と水瀬 冬佳。同じ世界からこの無辜なる混沌へ召喚された同郷者……そして──

「……こうしてあなたと居れば温かいですから……」
「……！　それなら、良かった」
　冬佳が千歳の腕に寄り添い、彼は彼女のその仕草に愛おしそうに微笑みを深めて。
「この世界にも雪はあるのですね……」
「そうだね……」
　元の世界でも静かに降る雪はあった。……だから寝つけぬ夜には思いを馳せてしまうもので。
「あの子達は……今頃大丈夫でしょうか。喫茶店も……どうなってしまっているのか……」
　突如この世界へ召喚された事により置いてきてしまう形となった妹や友人、借り受ける形で経営していた喫茶店はどうなっているだろうかと不安を募らせる。
　そんな冬佳を安心させるように千歳は穏やかな表情を浮かべた。
「心配、だね。……けれどあの子達ならきっと大丈夫だと思うよ、そう信じたい。だから早く帰れるように頑張ろう」
　それが今の俺達に唯一出来る事だから。

　二人はそう決意を新たに口付けを交わした。

※担当『月熾』