イラストSS

　シャイネンナハトの街の中では、たくさんの光が点っている。
　人が光の街を行き交う。愛する人、親しき友人など誰かと共に、もしくは誰かが待つ場所へと足早に。
　そんな街に溶けるように歩く子供が一人。その手には男の子と女の子の人形が一つずつ抱えられている。
　防寒着はしっかりと身に付けて、特に体を震わせることはない。周りの人は少しだけ寒そうに背を丸めているのに、子供はそんなこともなく歩く。
　その少しだけ人と違う仕草が、まるで子供も人形のように思わせる。
　しかし人々の目は子供には行くことはなく。
「今日は」
『どこもかしこも』
「賑やかだね』
　幼子のように高い声が、子供の口からではなく二つの人形の口から漏れる。
　レオンという男の子の人形、カルラという女の子の人形。その二つの人形が口を開いて声を出す。
　自分を抱えた子供の代わりに。
　体の動かせない子供を操り、子供の代わりに声を出す。
　子供と人形二つ、それら全てで一人の人。
「さぁこれから」
『どこに行こう？』
「どこに行けば良い？』
　子供は人形に答えない。
　だから、止まらずに歩く。

　そして、子供は雑踏へ消えていった。

※担当『灯火』