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ひと冬の友達
ひと冬の友達
イラストSS
「わ、すごい……!」
その朝、目覚めたコゼットが外に出るとそこは一面の銀景色だった。
降り続いていた雪は夜半のうちに止んだのだろうか、足を踏み出せば真新しい雪にうさぎの足跡がひとつ。
(こんなにわくわくする光景……おうちにいるの、勿体ないね)
そうと決まれば話は早い。お気に入りのコートを羽織って、マフラーと手袋で寒さ対策もばっちりに。仕上げにうさぎのマスコットをコートのポケットへ入れれば、準備は万端。
「よし、しゅっぱーつ」
ぴょこぴょこと弾むように歩き出せば――うさぎの足跡が、街の中心へと向かっていった。
見慣れた街、でもどこか普段と違って見える。
そんな日常と非日常の間を歩きながら小さな公園に辿り着くと、子どもたちが雪だるまを作っていた。
それを眺めるうち、ふつふつと湧き上がる好奇心。
自分もとしゃがんで目に入ったのは、ポケットに入れたうさぎのマスコット。
周りを見れば、雪の重さに負けて落ちた葉や実が目に入り――。
(……作戦、へんこー)
「できた……!」
数十分の格闘の末、出来上がったのは雪で作られた一匹のうさぎ。
赤い実で出来た瞳に、葉で作ったお揃いの長い耳。
眼前に持ち上げれば、愛らしい姿に笑みが零れる。
こうしてその日、コゼットにひと冬の友達が出来たのだった。
※担当『飯酒盃おさけ』