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イラスト詳細

――それは、在る二人の遠回りばかりの物語

作者 黒猫
人物 クロバ・フユツキ
シフォリィ・シリア・アルテロンド
イラスト種別 2人ピンナップクリスマス2019(サイズアップ)
納品日 2019年12月24日

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イラストSS

 カチコチ、カチコチ。
 進む時計の針の音がいつもよりも大きく感じて落ち着かない。
 聖なる夜。今日は特別な日。
 すれ違っていた糸と糸はいつしか出会い、絡み合うように月日を重ねて一本の紐となった。
 大切なヒトと過ごす、はじめての冬。だから、今日は大切な日。
(なのに……)
 先程から時計を見た回数はもうわからない。
 一緒に過ごそうと約束したのに。出掛けたまま帰ってこない彼のことが気がかりで。
(何かあったのかも……!)
 大怪我をした? 依頼で失敗して捕らえられたりしたのだろうか。
 こうしてはいられない。最低限の防寒具を羽織り彼女は家を飛び出す。
 時計の針は、もうすぐ真上を指そうとしていた。

 まったく、今日は厄日だ。
 早く帰りたい時に限って面倒事が次々押し寄せてくる。これを厄日と言わずになんと言う。
「おまえら、今日がなんの日か知っててやってるのか?」
 目前の『面倒事』には、この感情が理解出来ているのだろうか。
 出来ているならば嫌がらせを受けた分報復をするし、出来ていないなら自分の気持ちを誤魔化しながら八つ当たりができる。
 どちらにしても自分がやることは決まっているし、相手も『今日がなんの日か』くらいわかる筈だ。
「シャイネンナハトのプレゼント、受け取りやがれ――!」

「シフォリィ」
 切らした息を整えていた彼女の鼓膜を、愛しい彼の声が震わせた。
「あぁ……っ」
 両手を広げる彼の胸元に飛び込んだ彼女の体ははすっかり冷えきっていた。
「悪い、遅くなっちまった」
「大丈夫、大丈夫。……だって、」
 貴方が戻ってきてくれた。それだけで最高のプレゼントだから。
 彼女を包む温もりと、目尻の熱はとてもとても、暖かだった。

※担当『樹志岐』

挿絵情報

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