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そっと……
そっと……
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訪れたノリアを迎えるものは、大きないびきばかりだった。
多少の後ろめたさを感じつつ、部屋へとそっと忍びこんだなら、そこにはこんな夜に来訪者があるとはつゆも思わず、すっかり鍋をつついての晩酌が寝酒になってしまったゴリョウの姿。
仕方ない、帰ろうか……とも思ったノリアだったけれども、ふとひとつの考えが頭をよぎる――こんな時、恋人ならどうするものだろう?
外と比べると随分と暑い室内に外套を脱ぎ捨てて、自慢の尻尾を足へと変える。それをふたつに折り畳んでから――そっと、ゴリョウの頭の下に滑りこませてみる。
それは思っていたよりも恥ずかしいことで、ノリアはしばらく膝枕の感覚を楽しんだあと、再びこっそりと出てゆくつもりだった。けれども冬の風のせいでルイベ寸前だった足の冷たさは、ゴリョウを眠りから覚ますのに十分すぎた。
酔った瞼がぼんやりと開く。あっと思った時にはもう遅く、ノリアの側もその瞳に釘付けのまま。
ゴリョウが目の前に飛び込んできた光景の意味に気付くのも、こうなったら時間の問題だろう。今更逃げて無かったことになんてできず、ノリアの心臓は、焦りか、それとも別の感情のせいか、鼓動の速度を増してゆき――
※担当『椎野宗一郎』