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雪下 薫子のえびによる2人ピンナップクリスマス2019(縦)
雪下 薫子のえびによる2人ピンナップクリスマス2019(縦)
イラストSS
大丈夫だろうか。
靴を履く為に屈んだ薫子の後ろで、それを見る栄龍は一抹の不安を抱いた。
着物姿の所作は美しい。揃えて緩く曲げた足にピンと伸びた背筋があって、履き物の心地を直してから立つまでの一動に淀みは無い。
「どうかされましたか?」
艶やかな黒髪が揺れる。
振り返り、問われた言葉に栄龍は「いや」と一言入れて、眼鏡の位置を指で整えながら、一息。
「外は寒いだろうから、これを」
暖かな色合いのマフラーを取り出した。品のある、主張しすぎない花柄が色に溶け込んだマフラーだ。
驚く薫子の顔をちらりと見ながら、栄龍はそれを彼女の首元へかける。
着物のうなじはどうしても露出して冷たい。着流し姿の自分がそうであるように、彼女もきっと同じだろう。
と、そんな結論に至ったのは、マフラーを選ぶ為に費やした三時間の思考の末だが。
「ありがとうございます……ふふ、嬉しい」
「……ああ」
喜びに綻ばせた笑顔を直視出来ない栄龍は、逸らした視線の置き場を迷わせながら、それでも。
「行こうか」
「はい」
二人で共に、玄関の敷居を跨いで行った。
※担当『ユズキ』