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雪下 薫子のhoujohによる2人ピンナップクリスマス2019(横)
雪下 薫子のhoujohによる2人ピンナップクリスマス2019(横)
イラストSS
ふっ、と気配を感じたのだ。
「――雪か」
加賀栄龍。彼の部屋から見える窓の外。白き結晶が外に降り注いでいる。
ああ、かような時期かと……己が目に映る世界を見据えていれば。
「どうされました。何か、気がかりな事でも?」
己が伴侶――いや、正確には見合いをして付き合う事に成っただけである段階だが――
薫子がお茶と共に栄龍へ言を。
「いや。なんとなし、懐かしい気がしただけで……」
「懐かしい、とは生まれ故郷の?」
そう、なのだが。別に長い事雪を見なかった訳でもない。
しかしそう感じたのは何故だろうか。
戦続けの日々。あの蜜月の最中にも見た覚えはあった筈なのに。
「――」
薫子の煎じた茶を喉へ。
さればふっ――と、心が和らぐ。
温かな飲み物だからか。いや、否、否。そうではない――ああ――
「そうか」
ただ、視界が少しだけ広がっただけなのかもしれない。
彼女と共に在れるこの時を経て。
蜜月に慣れる前。まだ純粋なる時期に一度見た、あの日の雪を。
思い出しただけなのかもしれない。
「――淹れ直しましょうか」
気付けば飲み干していた杯の中。
彼女と交わす言葉は決して多くない。どころか手を繋いですらまだいない。
それでも、心のどこかで。
二人は共に過ごす暇を愛しく想い――確かに安らいでいた。
※担当『茶零四』