イラストSS

　リーゼロッテ・アーベントロート(p3n000039)は基本的に他人を余り信用しない。幻想の暗部とされる第十三騎士団を統括するアーベントロート侯爵家は歴代著名にして凄腕のアサッシンを輩出する家柄であり、それはリーゼロッテも例に漏れないからである。
　彼女はどれだけ華やかであったとしても、どれだけ享楽的かつ無軌道に見えたとしても油断をしない。己の背を他人に見せ、無防備な姿を見せるような女ではない――そう思われている。
「あの、くすぐったいのですが――」
「リズちゃんの髪はとても綺麗なのでずっと触っていたくなるんですよ！」
「……そうですか？　そう言われると、ほんとにもう。
　甘え上手でいけませんね、ルル家さんは！」
　少なくともこの日、夢見 ルル家(p3p000016)が自身そうと知らぬまま果たした『お風呂場での洗いっこ』は間違いない大事業であり、偉業であったとさえ言えるだろう。
「まさか拙者もこんな風になるとは思ってはおらず！」
「……私も。いえ、ルル家さんが雪合戦をするとか言い出すから」
「寒かったです！」
「私もです！」
　周囲をジャイアントスイングするタイプの二人の女は、結局薔薇の庭園で児戯めいた時間を過ごす事になったのだ。当然のように凍えれば、温まりたくもなるというもので――聖夜の魔法か何時もより緩いリーゼロッテはルル家にされるままといった感。
「でも」
「はい？」
「こういうのってお友達みたいでいいじゃないですか！」
「――――」
　屈託も何もない言葉にリーゼロッテは黙り込む。
　嬉しいような複雑なような、そんな顔をルル家に見せる事は無い――

※担当『YAMIDEITEI』