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のたれ死んだと思ってましたよ
のたれ死んだと思ってましたよ
イラストSS
輝くイルミネーション。すっかりとお祭り模様の聖夜の夜。
(――ま、気にしてないんですけどね)
そう強がりを、白い息とともに吐く。気にしてないならそんな事は言わない。
ウィンタースノウに染まりにぎやかな道を歩くエマの頭の中にはぼんやりと、一人の男の姿が引っかかっていた。
私と同じで元々はただの人で。大切とは言わないけれど、まあそれでも気にかかる、ぐらいの。
多分言葉に表すのならば戦友というべき存在。いつもならいつも見かける酒場にも、ときおり見かける煙草屋にもいない。そんなことが妙に気にかかって、エマはこのお気楽な聖夜も少しだけ、心の底から楽しめずに居た。
まあ兎に角稼ぎ時だと気分を切り替えて、顔を上げたその時。
「――あ」
其処には黒い髪、冬らしく暖かな服装に身を包んだ、壮年の男性の姿。
エマの姿をあちらも見つけたのだろう。少し目を開いて、それから、苦笑した顔で駆け寄ってきて。
「……はは、お久しぶりです」
「全く、何処に行っていたんですか」
「鉄帝で少し休養を取っていまして。やっと退院の許可が取れましてね」
少しは心配してやったというのに、ほんとうに相変わらずで思わず肩が落ちた。緩んだ緊張感のせいで頬が緩むので、少し当たるように。
だから言ってやるんです。
「……全く、貴方って人は。のたれ死んだと思ってましたよ」
※担当『金華鉄仙』