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ルアナ・テルフォードのsimaによる2人ピンナップクリスマス2019(横)
イラストSS
窓から零れる木漏れ日は淡く。
昼から遠い夕へと緩やかに向かっていた。
ドアベルの音色が喫茶店Shooting Starsに午後がやってきたことを優しく告げる。
ランチタイムを楽しんだ客の最後の一人が、店を後にしたのは、つい今し方の事だった。
グレイシアとルアナはバーテンダーの装いのまま腰掛けた。
シャイネンナハトを控えた今日なれば、おじさまは赤い帽子を乗せていて。
程よく暖まった室内に揺蕩う暖かな木の香り、冷めた石の静かな香り、それから――
そんな二人がうたかたの安寧に求めるものとは。この日ばかりはまかないではなく、ケーキなのであった。
漂う香りは珈琲。それからミルクにたまご、バニラ……焼けたメイラードの香ばしい匂いが、空腹を誘う。
ルアナはさっそく先の方をフォークできりとって、ぱくり。
舌を転げる滑らかなクリームと、ほっこりとしたスポンジのやさしい甘みと香りが口いっぱいに広がった。
「おいしい――っ!」
「それはよかった」
グレイシアが微笑んだのは、立ち上る珈琲の香りに鼻腔をくすぐられたからだけではなかろう。
「ねえねえ、おじさま。夜はワイン飲みたい! 乾杯しよ!」
ルアナは丸テーブルに少しだけ身を乗り出して。思い切ったおねだりを。
「お酒はダメだ……代わりに、ブドウジュースを用意しておこう」
「むー」
グレイシアはたしなめ、すぐに話題を切り替えようとするのだが。ああ頬が膨れている。
「何、どちらもブドウから作られた飲み物であることに変わりはない」
もういちど、やんわりと奨めてみる。
「いつか大人になったらワインで乾杯するんだから……」
「そうだな……大人になったのであれば、そういうのも良いかもしれんな」
大人に――なったのであれば――――
喉を滑る珈琲は苦く――
※担当『pipi』